2011/08/31

8月31日 夏の終わり

ついに8月が終わり、万年青の季節がやってまいります。
当方では植え替えをスタートしても良いような気候になってきましたが、本格的に始めるのは9月になってから、と計画を立てていたので、これからが忙しくなります。
売り物は別として、美術木を目指しているものには置き肥を施しました。

『芙蓉錦』
吹き3才で順調に作上がりしてきました。
天光冠と同じような地合いをしていて、たまらなく愛着があります。
葉肉も乗ってきて今から来作が楽しみです。

『天翔』
青です。葉繰りが良く葉姿が良い木ですが、芸も地もやはり一級品です。地はやや固い感じですが、芸をするとザラザラした感じになります。
2才でこれだけ芸が整うとは恐れ入りました。

『春日錦』

小型の『春日錦』通称「小春」?「小春日」?と呼ぶらしいのですが、今のところ、型も大きさも普通の春日錦と変わらないように見えます。
春日錦でも信じられないような雅糸竜を見せている木が展示されることがありますが、この系統がそうなのでしょうか。確かに葉繰りが2枚だけなので、本来の春日錦とは性質が違うようにも思えます…が、まだ判断はしません。

今日の気温

17時頃灌水。
台風が直撃する可能性があるので、外棚のおもとをどうしようか考え中。

2011/08/27

8月27日 お棚訪問

昨日は念願の一つであった東京の溪さんのお棚を拝見させていただきました。
萬風展や全国大会に出展されている木を見たり、園主などから聞いた話からも屈指の名棚だということは存じていましたが、実際に目の当たりにすると、やはり銘品貴品がずらーっと揃った名棚であり、名作者でいらっしゃいました。
朝日をしっかり採れる棚配置で、風通しは良いが強い風は周りの木で遮れる、と特に羅紗系を作るには最適の環境で作をされていました。

普段見ることのできないものばかり、貴重な写真を紹介させていただきます。

まず、作の良さとして印象に残っているのはこの木です。

お恥ずかしい話ですが、パッと見た時、品種が分かりませんでした。
すぐに得心しましたが『富国殿』だそうです。全ての葉に盛り上がるような至芸を見せ、葉姿も締まった名作品です。

そして登録された『理鳳』。

この品種は高い培養技術がいりますが、さすがに萬風賞を三回も受賞されているだけあって元気な若木が2本もありました。

『鳳山』覆輪。

覆輪のものはまだ数える程です。

『円心』

完全覆輪は初めてこの目で見ました。
紺性の淡い品種ですが覆輪で雰囲気がガラッと変わりますね。

『冠彩』『緑雲』『菱山』
いずれも一作くらいで美術木になりそうな作です…素晴らしい。

「祇王」「憧元」「鞍馬」
いずれもあまり目にすることのできないものです。

『楼蘭』『寿冠』
『壽冠』は今年の萬風展に出展されたものだそうで、美術木に仕上がっていました。

最後に『厳武』の覆輪。

昨年の萬風展に出展されていましたが、これだけの覆輪の木は他にあるのでしょうか。
『厳武』はデモが良いと言う方も多いですが、これだけの深覆輪と厳しい芸をした葉の雰囲気は他品種では今のところ再現不可能かと思います。

溪様、藤倉様、城田様にはたいへんなおもてなしをいただきまして、誠にありがとうございました。

2011/08/24

8月24日 瑞泉など

折衷植えで作っている『瑞泉』はこうなりました。
私としては満足の出来です。
欲を言えば今年の葉がどちらも広葉で繰ってくれれば大満足でしたが、この鈴虫剣の葉も元にかけて僅かに見える芸が男前なので良しとします。
肥料は置き肥を二回(4月と7月の初めに5粒づつ)、採光はこれ以上ない程、水は毎日かけました。

ある方が目を付けている実生。作出者は百瀬さん。
一度芋切りをした親木ですが、今年になって今まで見せたことのない広葉を繰り出しました。若返った分、葉肉は薄く見えますが、昨年までの芸をした葉には厚みがあります。
この広葉が重なれば結構な迫力になると思います。
葉の裏を見ると「しかみ」からの雅糸竜だということが分かります。
このことからも生えなどの芸足として「しかみ」というのは結構大事なポイントだと思います。

昨年の9月21日のblogに載せた札落ちの二面系羅紗ですが、今年はこうなりました。
私は当園に前からあったものでこの型だと「北斎」じゃないかと思っていたところ、ある業者の方が「これ北斎じゃない?」と言ってくれたので札落ち脱出に近づきました。あと何人か目利きの業者の方に先入観なしで見てもらおうと思っています。

『石鵬』

一時期「鶴の舞の図」と呼ばれていた品種。作ったことのある方ならご存知かと思いますが子が上がりやすく中々大きく出来づらいです。
その割には図もきれいに出て良く出来たほうだと思います。

『お多福の図』
塩村性。図の出方がたまりません。

外気21−29℃
温室22−28℃(鉢内も同じ)
昨日、一昨日は気温が下がり、最高気温は今日と同じくらいでしたが最低気温は外気が19℃になりました。
昨年の夏は16時くらいから灌水していましたが、今年は17〜18時くらいに気温が下がり、過ごしやすい風が吹き始めてから灌水するように意識してきました。

2011/08/22

8月 おもと懇話会

21日(日)に毎年恒例となっている、おもと懇話会が松川館で行われました。
今まではおもとの作について会員の皆さんで意見を出し合うという形式で行っていましたが、今年は東京支部から近藤氏を講師に招いて「病虫害防除の考え方」というテーマに基づいた講習会という形式で行われました。
講習の内容(箇条書き)
•おもとは病虫害に弱いのか
→作場、作る品種によって異なるが、基本的には他の植物と比べて強いと思う。

•なぜ発生するのか
→始めは教科書通りに防除をするが、慣れからの慢心による発生が多いように見受けられる。(教科書通りに防除していれば基本的には問題ない)

•完全防除するには
→おもとを作らないのが究極の答え、という冗談も交えながら。

•逆に大発生させるには
→近藤氏のイネいもち病用殺菌剤のスクリーニング試験で用いた方法
「窒素過多、日甘で徒長気味に管理」
「いもち病菌の胞子を大量に作り接種」
「その後湿度100%のムロの中で一晩管理」
安定的に大発生させることは難しいそうです。

•病虫害発生の三大要因→対策
「宿主(おもと)」
→丈夫な葉、根を作る。これにより一定の抵抗力が付く。
「環境(作場、植え込みの環境)」
→棚周りをきれいに、鉢内水分のバラつきをなくす(しっかりと抜き水)等。
「病原(病原菌、害虫等)」
→やはり棚周りをきれいに、病原の供給源を断つ等。
三大要因が重なった時に病虫害が発生する。まずは対策法を実施することが先決、そのうえで薬剤散布を。

•おもとの病気に関しては「糸状菌(カビ)」「細菌(バクテリア)」「ウイルス」が考えられる。
→糸状菌は赤星病等、発生には水滴が必要なので葉が湿っているような環境で発生しやすい。(酵素の働きに効くSH阻害剤ダコニール、オーソサイドなどを軸に、バイトレン、ベンレートなどをローテーションで。)
→細菌は青煮え等、傷から入ることが多く、自ら根を降ろす為に破った傷から入ることも。(特に気を付けるのは夏場で、アグリマイシンやマイシンが有効)
→それぞれに応じた殺菌剤の散布を。殺菌剤を混ぜて使用する場合、同じ作用のものを混ぜても意味がない。

•おもとの害虫に関しては主に「スリップス」「カイガラムシ」「ナメクジ」その他に「ヨトウムシ」や「ハダニ、ネダニ」も考えられる。
→出る時期に予防をすることが大事。ナメクジは根気よく見つけたら捕る。
→水和剤が使いやすく、大きな鉢のものには粒剤も有効。

•同じ薬剤を連続して使わずにローテーションすること。
•消毒の際は必ず展着剤を使う。
•製剤の種類として、フロアブルは単価が高いが計量が容易で葉が汚れにくいのでお薦め。

この他にも推奨レシピや参考になるお話がまだまだありましたが、このような面白い内容でした。

「農薬については昔とった杵柄ですが」と始めにおっしゃっていましたが、具体的で分かりやすく、プロフェッショナルな講習をしていただきました。
近藤様、ありがとうございました。

展示品、乾杯の様子

2011/08/17

8月17日 まとめて色々と

ランセット
これはどちらも大斑園の大谷さんから頂いたものです。どちらもスチール製ですが、右のランセットは組合で作ったものでやや厚手、当園のe-shopでも売っています(研いでないもの)。
独特の研ぎ方で切れ味は抜群。砥石だけでここまで研ぎ上げたというから驚きです。

『和楽』
以前にこのblogで青コレクションで紹介した木です。かすかに覆輪気があるような気はしていましたが、今年になって覆輪気がはっきりと出てきました。
嬉しい誤算。

次はこの間の旅行で売り物とは別で個人的に買い出した生え実生。
これは良いですよー!

「山比古」

少し葉焼けを起こしたところから一気に枯れ上がり、今年は終わった…と思っていたのですが、よく見てみると焼けているのは2枚だけ、ということで切ったら何とか形になりました。
でも腰が太らないんです…。中透けは作が難しい。

『駿河富士の図』
今年の春、図性の良い『残雪』だから一作しようと残しておいたものですが、駿河斑が見えてきました。
よくよく見ると下の葉にも微かに駿河斑が見えています。図性の良い『駿河富士の図』は少ないので貴重です。

『龍巻都の図』

打ち出された際に近所の前島さんのところに納まった木の直系らしいです。当時は数百万円していたのですから良い時代だったんですねー。
話は変わって、今までこの木は温室で作っていたのですが、毎年新葉まで図の部分が焼けてしまい、作がかからず「こりゃ病気が入ってるわ」なんて言っていた木がビニールハウスで一作したら見違えました。
図の抜けが本来から比べるといまいちですが、秋に水肥をやれば紺が乗り、真っ白に抜けてくると思います。
大葉は系統の良いものをきれいに作ると見ていて気持ちが良いです。

灌水
羅紗系統は湿気があり乾かない日は表面だけ振り水をして、しっかり乾いた日はたっぷりと灌水するようにしています。
大葉系統はほぼ毎日 振り水強 で、たまに(一週間に一度くらい?)抜き水。
芋吹は外棚で管理していてよく乾くのでほぼ毎日。8月まではバケツに水を汲み、乾いたものだけドブ漬けしていましたが、今は頭からかけています。

2011/08/10

業者旅行 二日目 いわき

二日目は実生が盛んな福島県のいわき市に入り、名作者である小滝さんや実生家さん方のお棚を見させていただいた後、三年越しの念願が叶い、日本屈指の実生家でいらっしゃる熊谷さんのお棚を訪問しました。
入り口の門には「玉松庵」の看板。


丁寧に一本一本説明していただきました。

熊谷さんといえば何といっても日本一の千代田系の大家です。
その研究によって生み出されたものは私の想像を遥かに上回った彼方にありました。
一つ目の写真のものは私が今まで見てきた羅紗千代田の中で『玉松』と並んでトップです。『玉松』とはタイプが違いますが。
まず命である斑、葉芸、覆輪、葉幅、葉姿どれをとっても非の打ち所がありません。そして地合いが完全に羅紗です。艶消し地です。
今年出た広葉なんかは腰折れが良く『円空』の若い時を彷彿とさせます。

これは葉肉があり葉芸が強くやや青みがちですが、やはり完全に羅紗の地をしています。
私は趣味面では青や縞でもいける口なので、この左側の二枚だけでしっかりとツボを押さえられました。

次は千代田の羅紗獅子の分野です。
今年の生えで根が完全に巻いている羅紗千代田を見せていただきましたが、この写真の木(2才)に関しては当才の葉がやや巻いていて当然根は巻いています。今後どう変化していくのか興味深いです。

そして千代田の羅紗、羅紗獅子に続いて大葉千代田を目指した交配にも取り組んでおいでで、その研究過程を見ることができました。
大葉おもとの本来は葉肉があり、幅広の立ち葉でなければなりません。そこに完全な千代田斑を乗せるのですから、羅紗千代田などを作出するのと同じくらいの難しさがあると思います。
私も「大象観」をベースにして挑戦します。熊谷さんから「長野県にある羅生の松は大葉千代田を作るなら使える」というアドバイスをいただいたので頑張ります。

千代田斑の副産物、千代田覆輪
千代田斑に関することは熊谷さんが最先端なんだなと改めて分かりました。

縞羅紗

世に出て行くのであろう実生が順番を待つように育っていました。

そしてそれに続く今年の生え。
真の実生家のあるべき姿とは自身の作り出した実生を抱え込むのではなく、世に送り出していくことにあるのだと勉強しました。

今回お邪魔しておもてなししていただいた皆様、大変お世話になりました。
ありがとうございました。